アメリカのヘッジファンド

アメリカのヘッジファンド

アメリカのヘッジファンド 「1940年投資顧問法」と「1997年全国証券市場改善法」と「2010年ドット・フランク法」 アメリカのヘッジファンドを規制してきた「1940年投資顧問法」と「1997年全国証券市場改善法」と「2010年ドット・フランク法(金融規制改革法)」の経緯を見ますと、アメリカのヘッジファンドに対する当局の考え方が理解できます。
まず「1940年投資顧問法」はヘッジファンドが対象にできる投資家を次の様に規定しています。この法律によりますとヘッジファンドが対象にできる投資家は、年収20万ドル(約2,000万円)以上で純流動性資産100万ドル(キャッシュか普通預金約1億円)以上を持つ個人投資家と規定しています。また、ヘッジファンドが募集できる人数は99名までに制限しています。
そして、「1997年全国証券市場改善法」は、投資家の年収は500万ドル以上で純資産2,500万ドル以上の投資家を対象に500名まで募集できると改正されました。つまり、1ファンド当たりの募集人数は緩和しましたが、より富裕層に対象を限定しました。
いずれも日本と同様にヘッジファンドが私募であることから、募集人数を制限している訳です。
その後、2010年にオバマ大統領によって成立した「ドット・フランク法(金融規制改革法)」は「ファンドマネージャーの登録」「銀行のヘッジファンドへの投資抑制」「ファンド投資家の保護」を目的とし、2008年の「リーマン・ショック」による金融危機を2度と起こさないためのヘッジファンド規制法と言われています。
つまり、2000年以降、アメリカの投資銀行や大手証券会社を退職した優秀なファンドマネージャーやトレーダーが、独立しヘッジファンドを相次いで設立し高いパフォーマンスを上げました。その結果、2011年3月末の世界のヘッジファンドの運用資産総額は初めて2兆ドルを突破しました。
しかし、一方でヘッジファンドに対する規制はジワジワと強化され、ファンドマネージャーの裁量で自由に運用するというヘッジファンドのメリットが失われつつあると言えます。
従って、ヘッジファンドと投資信託の違いが、より少なくなりつつあるのが現状なのです。


最近のアメリカ・ヘッジファンドのトピック

最近のアメリカ・ヘッジファンドのトピック 2011年のアメリカ・ヘッジファンドの調査で、著名ファンドの設立から2011年までの累計利益をランキングしています。日々の相場では短期的な利益を目指すヘッジファンドですが、投資家にとっての関心事は長い間のパフォーマンスなのです。
この調査によりますと2011年までの累計利益でトップに立ったのは、年間で138億ドル(約1兆3,800億円)を稼いだ「レイ・ダリオ」の「ブリッジウォーター・アソシエイツ」です。
「ブリッジウォーター・アソシエイツ」は、「グローバル・マクロ」戦略で株式・債券・為替・商品などに幅広く投資し大きな利益を上げました。現在、「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の運用資産総額は719億ドルと世界最大規模で1975年の設立以来36年間で358億ドルを稼いでいます。
この調査の2位には、2011年は損失を計上しましたが1973年から2011年までに累計312億ドルを稼いだ「ジョージ・ソロス」の「ソロス・ファンド」が入っています。
只、「ジョージ・ソロス」は2011年7月に、自家運用を除く外部投資家の資産運用から引退することを発表しています。
そして、この調査の3位には同じく2011年は96億ドルの損失を計上しましたが、1994年の設立から2011年までに累計226億ドルを稼いだ「ジョン・ポールソン」の「ポールソン&カンパニー」が入っています。やはり、累計利益の額では、ヘッジファンド界のビッグネームがランキングされている訳です。
日本の投資家の感覚では設立年度と運用資産額が違うこれらのファンドの累計利益額を比べても余り意味が無い様に思えますが、過去の実績と利益の絶対額を重視するアメリカでは意味のあるランキングの様です。つまり、良いパフォーマンスを継続しているファンドには資金が集まるので、累計利益が膨らむと考えているのでしょう。
一方、2011年単年度でのリターンNO.1ヘッジファンドは、「チュース・コールマン」が運用する「タイガー・グローバル」が年率45%という驚異的なリターンを上げています。
今後、累計利益トップ3のビッグネームに対して、弱冠36歳の新時代のファンドマネージャーと言われる「チュース・コールマン」が挑んでいくことになります。