ヘッジファンドと投資信託の違い

ヘッジファンドと投資信託の違い

ヘッジファンドと投資信託の投資制限の違い

ヘッジファンドと投資信託の投資制限の違い もともと、ヘッジファンドには投資制限という概念が存在しません。何故なら、ヘッジファンドに資金を預ける投資家は、ヘッジファンドの運用方針を聞いてヘッジファンドに投資する訳ではないからです。ヘッジファンドに資金を預ける投資家はヘッジファンドが高いパフォーマンスを上げることを期待して投資しますが、運用の中身はファンドや運用するファンドマネージャーの自由裁量に任せています。
つまり、投資家は運用方針に投資するのではなく、ヘッジファンドのブランド名やファンドマネージャーのネームに投資しているのです。
従って、高い水準のパフォーマンスが達成されれば成功報酬で利益の数パーセント~数十パーセントの運用手数料を払いますが、マイマスになった場合の手数料はゼロで二度とそのヘッジファンドに投資することはありません。
対照的に投資信託は明確に様々な投資制約を受けています。投資信託の1つのファンドが設定される度に目論見書が発行されますが、目論見書の中には対象となる金融商品や運用方法が細かく列挙されています。従って、本来、投資信託は証券会社の社名で買うべきではなく、そのファンドの運用方針を見て買うべきなのです。
また、ヘッジファンドはどんな相場に於いても利益を目指しますが、投資信託は相対的に良いパフォーマンスを目指しています。
例えば、市場が10%下落した局面でもヘッジファンドは利益を狙いますが、投資信託は市場が-10%の局面では-10%以内のパフォーマンスを目指します。つまり、市場が-10%の局面では投資信託は-5%の運用で終われば勝ちですが、ヘッジファンドはどんな相場であろうと-5%は負けなのです。これをヘッジファンドの絶対利益の追求と言います。


ヘッジファンドと投資信託の手数料の違い

ヘッジファンドと投資信託の手数料はヘッジファンドが合理的な成功報酬制を最初から取り入れているのに対して、投資信託は固定手数料制度を未だに継続している点が決定的な相違点と言えます。
基本的にヘッジファンドは絶対利益の追求が共通した運用目標ですから、例え2008年の様な暴落相場であっても運用パフォーマンスがマイナスである場合は報酬を受け取りません。
そして、運用パフォーマンスが良い場合の成功報酬は、運用パフォーマンスが上がると料率もアップする仕組みになっています。例えば、運用パフォーマンスが年間で10%の場合の成功報酬を10%としますと、運用パフォーマンスが20%の場合は成功報酬が30%になったりする訳です。この様なヘッジファンドの成功報酬制はヘッジファンドファームによっても全く違いますから一概には言えません。
一方、投資信託の手数料は完全固定手数料制が未だに維持されています。勿論、運用パフォーマンスが年間でマイナスになった場合も、完全固定手数料が割引されることはありません。
因みに現在の一般的な投資信託の手数料は4つの手数料がありますが、そのことは余り知られていません。まず、ファンドの販売時に「販売手数料」が0~5%取られることは誰でも知っていますが、次に運用手数料として毎年0.6~2.5%の「信託報酬」と呼ばれる費用が差し引かれていることは余り知られていません。更に、解約時に「解約手数料」か「信託財産留保額」と呼ばれる費用が0~0.5%差し引かれるのです。
従って投資信託を1年で解約した場合、最大で8%の手数料が掛かる場合が有ります。只し、一番大きい販売手数料は販売時だけですから、3年保有した場合の手数料は最大でも年に4.6%程度に下がります。更に、ファンドが売買する度に委託手数料がファンドの勘定から支払われている訳です。
従って、証券会社にとって投資信託は「金のなる木」ですが、株式委託手数料が完全自由化され信用取引の株式委託手数料がゼロの業者が現れている時代に投資信託だけが高い料率の完全固定手数料制を維持しているのは驚きと言えます。
また、その様に手数料の高い金融商品を平気で買う投資家の心理が理解できません。
例えば、「2011年の投資信託概況」によりますと2011年の投資信託の運用損失は前年比2.4倍の9兆829億円に膨らみ、投資信託の純資産総額は57兆3,274億円(-6兆3,927億円)になっています。つまり、1年で純資産総額に対して-15%の運用パフォーマンスということになり、この-15%には投資信託の手数料が含まれているところに投資信託の最も大きな問題点が潜んでいると言えます。

ヘッジファンドと投資信託のパフォーマンスの違い

ヘッジファンドと投資信託の手数料の違い ヘッジファンドの運用パフォーマンスは基本的に非公開ですから、詳しい運用パフォーマンスは解かりません。しかし、1つのデータからヘッジファンドの運用パフォーマンスを推測することができます。
著名なヘッジファンドの「ポールソン&カンパニー」の2009年の運用資産は約2兆9,000億円ですが、経営者の「ジョン・ポールソン」の年間報酬は約4,200億円と発表されています。従って、4,200億円は運用資産の2兆9,000億円の14.5%に相当しますから、2009年の「ポールソン&カンパニー」の運用パフォーマンスは14.5%を下回ることは無く、その数倍の50%程度の運用パフォーマンスを上げたと思われます。
勿論、全てのヘッジファンドがこの様な運用パフォーマンスを上げている訳ではありませんが、基本的にヘッジファンドは宣伝や営業活動を全く行いませんから低いパフォーマンスのヘッジファンドは淘汰されて存続できなくなります。
一方、投資信託の運用パフォーマンスは、今更、言うまでもありませんが、株式市場が上昇すれば運用パフォーマンスは上昇し株式市場が下落すれば運用パフォーマンスも下落するパターンを繰り返しています。2011年の投資信託の運用パフォーマンスが-15%になっていることが端的な例と言えます。
その原因は、株式投資信託の殆どはロングポジション(買い)中心ですから、株式市場が上昇すれば儲かりますが下落した場合はお手上げなのです。
また、営業上の理由もこれに拍車を掛けています。つまり、投資信託は株式市場の上昇局面で設定が増えますから、インデックスの水準が高いところで設定されるファンドが多くなる訳です。
つまり、証券会社が販売し易い時期に大量設定するのではなくて、売り難い時期に大量設定しなければなりません。従って、投資家の立場で言えば、投資信託は株式市場が低迷している時期に買わなければならないということになります。
そして、ヘッジファンドと投資信託の運用パフォーマンスの差の最も大きな要因は、運用を担当しているファンドマネージャーの力量の差です。その力量の差はメジャーリーグの一流選手と日本の社会人野球の選手の差と考えれば良いのです。
ヘッジファンドのファンドマネージャーは完全実力主義で契約は1年契約が殆どですから、必死で相場に食い付いていきます。しかし、投資信託のファンドマネージャーはサラリーマンファンドマネージャーですから、雇用は保証され給与は完全固定給なのです。
この様な仕組みの中で投資信託のパフォーマンスが良くなる筈はありません。