ヘッジファンドの投資手法

ヘッジファンドの投資手法

伝統的なヘッジファンドの投資手法

伝統的なヘッジファンドの投資手法 最初のヘッジファンドの投資手法は株式と債券のアービトラージ(裁定取引)から始まったことは既に紹介しましたが、1970年代までは株式と債券のアービトラージと株式の銘柄毎のアービトラージがヘッジファンドの主な戦略でした。
そして、ヘッジファンドの投資手法に革命的な変革が起ったのは、1990年以降のことです。
つまり、1990年以降の金融の自由化とそれに伴うデリバティブ商品の登場で、ヘッジファンドは驚異的なパフォーマンスを記録し始めます。
それと同時にITの発達によって、世界中の有価証券・為替・原油・穀物・不動産などが投資対象なった訳です。つまり、東京市場やニューヨーク市場などの1国の市場に拘るよりも、最もパフォーマンスの上がりそうなボラティリティのありそうな市場にレバレッジを掛けていく手法です。
その結果、2012年7月末の世界のヘッジファンドの運用金額は1兆7,389億ドルとなっていますが、この時点の投資戦略別内訳は株式ロング&ショート29.5%・マルチ15.5%・アービトラージ13.3%・フューチャー11.6%・マクロ8.9%・その他20.9%となっています。


現在のヘッジファンドの投資手法

現在のヘッジファンドの投資手法 現在のヘッジファンドの組織は非常にシンプルです。多くのヘッジファンドはトップの下に何名かのファンドマネージャーがいるだけの組織で、それ以外にバックオフィス要員が十数名いれば多い方です。そして、各ファンドマネージャーが1人数十億円から数百億円のファンドを運用しますが、稀に1人のファンドマネージャーが数千億円を運用する場合もあります。そして、ヘッジファンドのトップは「ジョージ・ソロス」や「ジョン・ポールソン」の様に、ヘッジファンドのトップがファンドマネージャーを兼務している場合が多くなっています。
もともと、一介のファンドマネージャーとして大成功を収めた人物が、自分のヘッジファンドを立ち上げるケースが多いからです。
そして、その様な大物ファンドマネージャーは、必ず自分の得意なストラテジーを持っています。例えば、空売りであったり、バリュー投資であったり、為替であったり、アービトラージであったりします。
従って、各ヘッジファンドの投資手法はバラバラで非常にユニークな戦略が多いといえます。そして、ヘッジファンドの各ファンドマネージャーにも同様のことが言えます。
例えば、トップが空売りを仕掛けていても、部下のファンドマネージャーがロングポジションを持つことも有り得ることなのです。
ヘッジファンドで大事なことは結果だけですから過程は全く問われません。しかし、結果が伴わない場合のファンドマネージャーには解雇が待っているだけなのです。
一方で、国内の投資信託や投資顧問会社の運用体制は、旧態依然の体制が全く変わっていません。確かに、各ファンドマネージャーの運用手法は進歩しています。しかし、もともとの運用体制は全く進歩していないのです。
国内の投資信託や投資顧問会社の運用体制は数名のトップの下に、様々な組織が配置されています。運用部・運用企画部・トレーディング部・調査部・企画部・営業部・経理部などです。そして、最も重要なその時々の運用方針は、トップや各部長が集まった運用会議に於いて合議制で決定されています。
従って、ヘッジファンドの様な思い切った独自の戦略が取られることはありません。常に、合議制の会議に於いては、最も常識的な戦略が選択される傾向が強いからです。
その結果、国内の投資信託や投資顧問会社の運用パフォーマンスは相場が上昇すれば運用パフォーマンスも上昇し、相場が下落すると運用パフォーマンスも悪くなることの繰り返しとなっています。
しかも、悪い運用パフォーマンスの責任を取るシステムもありません。運用パフォーマンスが悪くてもファンドマネージャーは首になることは無く、数年すれば別の部署に異動していくのです。この様な国内の投資信託や投資顧問会社にお金を預けても、良いパフォーマンスは期待できません。