ヘッジファンドの動向

ヘッジファンドの動向

2000年以降のヘッジファンドの状況

2000年以降のヘッジファンドの状況 順調に成長が続いていた2000年以降の世界のヘッジファンドは、2008年の「リーマン・ショック」を契機とする世界的な金融危機の影響でファンド数と運用金額が大幅に減少しました。金融危機前の2008年6月には1兆9,500億ドルに達した運用金額は、2009年4月には1兆2,900億ドルまで減少しました。
その後、ニューヨーク株式市場の回復からヘッジファンドのパフォーマンスと運用金額も回復に向い、2010年末の運用金額は1兆6,700億ドルに回復しています。
そして、2011年3月末に世界のヘッジファンドの運用資産総額は初めて2兆ドルを突破しました。これは2008年の「リーマン・ショック」による金融危機を克服し、金融危機前の2008年6月末の1兆9,300億ドルという史上最高記録を更新したものです。
2011年4月の「ブルームバーグ」の世界ヘッジファンド運用資産ランキングは次の通りとなっています。(為替は1ドル=80円で計算)

ヘッジファンド名拠点運用金額
マン・グループ(ロンドン)5兆5,200億円
ブリッジウォーター・アソシエイツ(ウエストポート)4兆9,600億円
JPモルガンアセット・マネジメント(ニューヨーク)3兆6,400億円
ポールソン&カンパニー(ニューヨーク)2兆8,800億円
ブレーベン・ハワード・アセットM(ロンドン)2兆5,800億円
Och-Ziffキャピタル・マネジメント(ニューヨーク)2兆2,900億円
ソロス・ファンド・マネジメント(ニューヨーク)2兆1,600億円
ブラックロック(ニューヨーク)2兆1,200億円
ハイブリッジ・キャピタルM(ニューヨーク)2兆円
ブルークレスト・キャピタルM(ロンドン) 1兆9,600億円

最近のヘッジファンドの運用パフォーマンス

2011年の「ブルームバーグ・ヘッジファンドリターンランキング」を見ますと、2011年のリーターンNO.1ヘッジファンドは「チュース・コールマン」が運用する「タイガー・グローバル」が年率45%という驚異的なリターンを上げています。
「チュース・コールマン」は弱冠36歳の新時代のファンドマネージャーと言われ、「ジュリアン・ロバートソン」の「タイガーマネジメント」で鍛えられたヘッジファンド業界の新たなスターと言えます。
2011年はヘッジファンド業界にとっては歴史的な大負けの年となりましたが、著名ファンドマネージャーの運用パフォーマンスは明暗を分けています。
「チュース・コールマン」や「ブリッジウォーター」の「レイモンド・ダリオ」や「ルネサステクノロジー」の「ジェームス・シモンズ」が年率30%以上のパフォーマンスを確保しているのに対して、「ジョン・ポールソン」と「デービッド・テッパー」は大きなロスを出しているからです。
2011年の「ブルームバーグ・ヘッジファンドリターンランキング」は次の通りです。(為替は1ドル=80円で計算)

ヘッジファンド名運用金額年率
タイガー・グローバル4,800億円45.0%
ルネサス・I・エクイティ5,600億円33.1%
ピュアー・アルファⅡ4兆2,400億円23.5%
DMFP2,000億円20.9%
プロバイドMBS1,000億円20.5%
オキュラス5,600億円19.0%
オール・ウェザー3兆5,200億円17.8%
ダイモン・アジア・マクロ1,200億円17.8%
シタデル8,800億円17.7%
コーチ・キャピタルM3,700億円16.9%

ヘッジファンドの現状

最近のヘッジファンドの運用パフォーマンス 2011年3月末に世界のヘッジファンドの運用金額が初めて2兆ドルを突破しましたが、その後の運用金額は伸び悩んでいます。
世界のヘッジファンド動向に詳しい「日興フィナンシャル・インテリジェンス」のデータによりますと、2012年7月末の世界のヘッジファンドの運用金額は1兆7,389億ドルとなっています。この時点の地域別内訳は北米が68.8%・欧州20.7%・アジア6.3%・中南米3.3%・日本0.9%となっています。
また、投資戦略別内訳は株式ロング&ショート29.5%・マルチ15.5%・アービトラージ13.3%・フューチャー11.6%・マクロ8.9%・その他20.9%となっています。
従って、ヘッジファンドの投資戦略は株式のロング&ショートは3割に過ぎず、7割の資金は様々な戦略で運用されていることが解かります。
また、2011年に「ポールソン&カンパニー」が香港進出のために「ポールソン・アジア」を設立し、香港証券先物委員会に届けを出し取引免許を取得しました。また、D・E・ショー&カンパニーが東京や上海事務所を開設する動きが見られ、2011年以降はアジアがヘッジファンドの新たな拠点となる動きが出てきたことが考えられます。
そして、2012年秋からのアベノミクスによる日本株の上昇によって、日本株に投資するヘッジファンドの数と資金規模は急速に膨れ上がっています。
2012年末の段階で日本株に投資するヘッジファンドの数は362社に達し、「リーマン・ショック」前の2007年の349社を上回りました。その後、2013年3月末には367社に増え、運用資産も225億ドル(約2兆2,500億円)に増加しています。この数字は2012年比で+10%に相当します。
当初、2012年11月~12月に日本市場に参入したヘッジファンドはコールオプションを買い円を売るなどのマクロ戦略型のファンドが目立ちましたが、2013年6月以降はよりアクティブな「株式ロング&ショート型」のファンドが増えています。
つまり、2012年10月から2013年5月までは業績に関係なく株価が水準訂正していましたが、6月以降は企業業績の先行き次第で銘柄が選別される相場になってきたと言えます。